リンク相互記念SS
この空の下で」 Novel「Change The Relation」より

『一枚の写真』


ある日の放課後。
深夜は一人で廊下を歩いていた。
ある生徒に捕まってしまい勉強を教えていたからだ。
柚子葉と付き合うきっかけとなったテストから深夜は真面目にテストを受けるようになった。
もう手を抜くと先生にバレバレだから仕方なくだが…
勉強を教えるので遅くなるだろうと思い柚子葉を先に帰らせた。
勉強を教えていた生徒は『もう大丈夫だから』と深夜を解放した。
外靴に履き替えた深夜は校門のほうに向かうと見慣れた人が立っていた。
その人の隣にはもう一人中年の男性がいた。
とりあえずそちらに向かい声をかけた。

「柚子」

その見慣れた人とは柚子葉だった。
柚子葉は困ったような顔をして深夜のほうに走りよってきた。

「まだ帰ってなかったのか?」
「先生に用事があったから。で、帰ろうとしたんだけど道を聞かれて…」
「道?」

どうやら柚子葉に話しかけていた男性は迷ってしまったようだ。
深夜は男性に近づいた。

「どこに行きたいんですか?」
「ここなんだが…」

男性は地図を深夜に差し出して目的地を指差した。
深夜はその目的地を確認して頷いた。

「あ、ここならこの道をまっすぐに行って…」

深夜はなるべく分かりやすく男性に道を教えた。
男性は深夜の指示を聞いて頷いた。

「分かりました。すいません」
「いえ…。一緒に行きましょうか?」
「大丈夫です。あの…もしかしてお二人は恋人同士ですか?」
「ええ、まぁそうですけど?」
「よろしければ一枚撮らせてもらえませんか?」
「は?」

深夜と柚子葉が何を言ってるのか分からずに呆然としている中、男性は笑顔でカバンからあるものを取り出した。
深夜はそれを見て呟いた。

「カメラ…ですか?」
「ええ。私カメラマンなんです。お礼に一枚撮らせてもらえませんか?」

深夜と柚子葉は顔を見合わせて『せっかくだから』と了承した。
カメラマンの男性は笑顔で、そして嬉しそうにカメラを構えた。

「それじゃあ校舎をバックに撮りましょう。…もう少し寄っていただいて。はい、それじゃあ撮ります」

カメラマンはシャッターを切った。
そして、満足そうに頷いた。

「ありがとうございます。おかげでいい写真が撮れました」
「いえ、こっちのほうこそありがとうございます」
「現像できましたら送りますので住所を教えていただけますか?」

カメラマンが差し出したメモ帳に深夜が住所を書き込む。

「それじゃあお願いします」
「はい。ありがとうございました!」

男性は頭を下げて目的地に向かって歩き出した。
それを見送って深夜と柚子葉は顔を見合わせた。

「道を教えただけなのにね」
「まぁ、あの人が撮りたいって言ってたんだしいいんじゃないか?さて、帰るか」

後日、深夜の家で二人はあるものを見ていた。
あの日にカメラマンに撮ってもらった写真が届いたのだ。
二人はそれを見て嬉しくなった。

「こんなにいい写真を撮ってもらえるとは正直思ってなかった」
「私も。ちょっと恥ずかしいかも…」
「だな」

そこに勇一と忍が近寄ってきた。

「それどうしたの?」
「これ?道を教えたら撮ってくれた」
「へぇ〜、よく撮れてるじゃない。ねぇ、勇一」
「あぁ。あ、深夜。悪いけどパソコン借りるな」

勇一はそういってパソコンが置いてある深夜の部屋に入っていった。
深夜は忍に聞いた。

「勇兄、どうしたの?」
「知らない。調べ物があるんじゃない?」

結局勇一が何をしているのかは分からずじまいだった。
それから数分後、勇一が慌てた様子で部屋から出てきた。
普段動じない勇一なので深夜達は驚いた。

「ゆ、勇兄?どうしたの?」
「ちょ、ちょっと来い」
「は?」
「いいから!山下もだ!」

深夜と柚子葉は勇一に連れられて先ほど勇一が出てきた部屋に入った。
その後ろを忍もついてきた。
勇一はパソコンを操作してあるサイトに辿り着いた。

「これさっきの写真じゃないか?」
「…マジ?」

そのサイトはプロのカメラマンが応募しているコンテストのサイトだった。
そこに先ほど送ってこられた、深夜と柚子葉の写真が特別賞を取っている。

「うわ〜、マジかよ〜…」
「お前らに見て欲しいところはここなんだよ」

勇一はページをスクロールして見せたい該当部分にマウスを当てた。
そこは受賞者のコメントが載せられている。

『ある日迷っていた私に道を教えてくれた高校生の恋人同士なんですが、とても親切にしてくださいました。少ない時間でしたがとてもお似合いの二人でしたのでついお願いをして写真を撮らせていただきました。この二人のようにこれからも親切にしていただいた写真を撮り続けたいと思います』

深夜と柚子葉はそのコメントを見て困惑した。

「まさかこんなことになるなんてな」
「う、うん」
「ちなみにこの写真を撮ってくれた人はとても有名な方らしい。これはあの人にもお前らにとっても宝物になるんじゃないか?」

勇一の言葉に深夜と柚子葉は揃って頷いた。
その日から、二人の家には額に入れられた写真が飾られることになった。

※この小説の著作権は『タカ様』にあります
写真素材:ミントBlue

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