Bands of brotherhood - 琉誠 編 -



 沙織を送り、家に帰ると琉誠(りゅうせい)がリビングのいつもの場所に座ってテレビをみていた。
「おっかえり〜、リョウ〜、花火大会どうだった?」
 涼雄の姿を確認すると軽い調子で声をかけてきた。
「お前なんでそれをしっている?」
 今日花火大会へ行くことはあまり周りに喋っていなかったのだ。
「う〜んと、スタイリストの篠沢さんに桜木町の花火大会のこと聞いてたでっしょ?」
 琉誠は小首を傾げてそう笑いながらそう答えた。
「デート? リョウって彼女いたんだ〜」
 ニヤリと自分とは似ていない双子の片割れが笑ってそう聞いてきた。
「あいつには黙っててくれ。 バレるとまずいから……と、言ってもあいつのことじゃ薄々感ずいていると思うけどな」
 涼雄は、そう真剣に琉誠にそう言うと、
「ん〜、ま〜仕事に支障がなければバレても大丈夫でしょ? あ、でも、もし付き合ってる子が同じ業界の子ならバラしたほうが都合が良くない? 後々の色んな諸々のことで」
 琉誠が、そう涼雄に助言する。
 涼雄と琉誠は、仲の良い双子の兄弟だ。
 お互い同士の秘密を共有するが、必要以上に干渉しないが手助けをしないわけではない。
 だから、涼雄も琉誠にだけは隠すことはしない。
「一般人、いやギリギリ一般人かな?」
 思案しながらそう俺が答えると、
「なにそれ? ギリギリ一般人って?」
 怪訝そうな顔で琉誠が聞き返してきた。
「身内が俺らと同業なんだよ」
 そう涼雄は答えた。
「へぇ〜、確かに微妙な一般人だね〜、因みに誰よ?」
 一応その答えに納得した琉誠はさらに聞くと、
「絶対誰にも言うなよ?」
 涼雄は、琉誠に近づきながら確認する。
「俺、リョウのことで許可なくバラしたことねぇ〜だろ? なっ、で誰だよ」
 確かに、琉誠は口が堅い。
 涼雄に対して喋る時意外は、一切余分な口は聞かない無口と言って良いほどなのだ。
「隣の沙織。 お前も覚えてるだろ、信也の上の妹」
 さらに音量を下げてそう涼雄は琉誠に告白する。
「ええぇ?!」
 それには、さすがにびっくりした琉誠はつい声を上げてしまったが直ぐに琉誠も声のボリュームをさげながら、
「いつから付き合い始めたんだよ?」
 そう涼雄に問いかけた。
 琉誠は、涼雄がずっと昔から、まだ沙織と仲が良く一緒にすごしていた時から彼女のことが好きということを知ってる。
 モデルの仕事をしだし、彼女との接点がなくなって会うこともままならないことも無論知っていた。
「今年のうちの学校の入学式に、再会してその日のうちに」
 顔を赤らめながらそう涼雄が言うと、
「うわ〜、涼雄顔真っ赤。 うへぇ〜マジ?」
 普段見ることがあまりない涼雄の表情に琉誠は、驚きながら声を上げた。
「ああ、やっと手に入れた」
 優しい微笑を浮かべながら、そう涼雄がポツリと言った。
「よかったな!」
 琉誠も陰ながら一応応援していた片割れの恋が実った事を心底よろこんだ。
「同じ学校なら俺も会うことがあるか……今度、会わせてくれよ? 俺も一応幼馴染だし」
 そう琉誠が聞くと、
「ああ、そのうち必ずな。 おどろくなよ? 沙織、めちゃくちゃ可愛いいから」
 惚気に聞こえる台詞をはきながら涼雄はそう答えた。
 そんな涼雄をみて苦笑を浮かべた琉誠は、
「リョウ、仕事柄にしろ、学校のことにしろ、手に負えないなにかがあったら絶対に俺に相談しろよ? 一人より二人のほうが解決できることはあるからな?」
 そう琉誠が言うと、
「ああ、その時は頼む」
 そういって涼雄は、破顔した。
「そういえばリョウ、お前外出したのに今日は眼鏡かけてないのな?」
 今気づいたとばかりにそう琉誠が涼雄に聞くと。
「え?」 
 と、涼雄は、目元に手をやる。
 いつもはある眼鏡の存在がなかった。
 途端にしまったという顔になる。
 一応キャップも目深に被っていたし、結構暗くなっていたからと多分大丈夫と涼雄は無理やり納得した。
「まったく、何をいそいでいたんだか? 沙織と付き合うんだったら、気をつけてやれよ〜?」
 琉誠も涼雄の失態に呆れつつそう忠告してきた。
「ああ、わかっている」
 反省の色を浮かべながら涼雄はそう答えた。
 とその時メールの着信音がした。
 音からして沙織からだ。
 涼雄は、琉誠に部屋に戻ると言うとリビングを後にした。

「よかったな、リョウ」
 涼雄が出て行ったとびらにむかって小声でもう一度そう琉誠は、そう言った。
 嬉しそうに、少し寂しそうに。


 -完-


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