Date on holiday -それはシコウな時間- | |
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「沙織、デートしよう?」 私は高校2年生に涼君は高校3年生になり、新緑が目に眩しい5月の初旬の頃。 彼は仕事、私は学園の菖蒲祭準備がひと段落した合間、久しぶりに一緒に下校し「喫茶ふぉれすとべあ」で俗に言う『放課後デート』を堪能している時にそう彼が切り出した。 「デート? 今しているよ??」 首を傾げながら私がそう言うと、 「ごめん、言葉がたりなかった。 今度のオフの時に」 と、彼は謝りながらそう言いなおして、私が大好きな笑顔に向けた。 なんだか最近の彼は何かが変わった。多分、バレンタインを境にしてだったと思う。 例えば昼休み。昼食の時、生徒会室や科長室ではなく、季節の花が咲き誇り、甘い芳香を漂わせる薔薇の咲き誇る中庭で食べるようになった。 それに、今まで学校でこそこそするように会っていたのに今では堂々と下校時間になると私の教室まで迎えに来てくれる。 涼君は、人気ファッションモデルで学業と仕事を器用に両立して半端なく忙しい毎日を送っているけれど、その合間に私と一緒に居られる時間があれば何を置いても一緒に過ごしてくれるようになった。 まるで、公私ともに周りに「恋人」だということをアピールするように。 大変じゃない?とか 負担になっていない?とか 口に出さないけれど、最近そう常に思う様になるほど一緒に居る時間が、公衆の目にさらされる時間が多くなった。 そんな中、付き合い始めた頃と今とではちょっと違う心情も出てくる。 彼のことを「どうしょうもなく好き」という気持ちは変わらない。それは付き合い始めて半年ぐらい経った頃から受け始めた「嫌がらせ」をされて、一時は怪我を負いそうになる様な事があっても変わらなかった。 けれど、彼と私とでは釣り合わないんじゃないかと、思うようになってきた。 たとえば、こうして稀に誘ってくれる涼君のオフの日のデート時。 初めにした休日のデートは夏祭りだった。その時に感じた周りの人の視線。 涼君はキャップを目深にかぶっていてモデルの「Ryo」と気取られることは皆無だたったけれど、背が高く自分に合った私服を着こなしモデルある彼が姿勢よく颯爽と歩いていれば、人目に付く。様似なる彼にくぎ付けになる女の人は多かった。 それ以来、ずっと休日デートの時に感じる視線。 普通の彼氏彼女の様に頻繁ではないけれど、映画に行ったりショッピングをしたり、そんなときに必ず気づいてしまう視線。 多分彼は気づいていない。職業柄視線に慣れていて気にもならないと思うし、その種の視線は全て私に向けられているから。 どうして隣に居るのが貴方なの? そう聞こえてきそうな視線。嘲笑を現した視線。 その視線で嬉しいはずの楽しいはずの時間が、『至高』なはずな時間が、暗く出口のない迷路の様な『思考』の時間となってしまうのだ。 だから、「オフの日のデートしよう?」と聞いて一瞬暗い表情になるのを抑えられなかった。 「沙織は、デートするの嫌い?」 私の一瞬の表情を見落とさなかった彼がそう、少し首を傾げて戸惑う様に聞いてきた。 「……デートは、嫌いじゃない。 涼君と一緒にいれて嬉しいし楽しいから」 ちょっと躊躇いながら、そう前置きして、 「でもね、町中とか人が沢山いるところが苦手なの」 もともと、人が沢山いるところには弱い。人酔いをするから。それと、視線のこともあって私はそう涼君に答えた。 彼が変わった様に私も変わった。 前は我儘かもしれないと、内に秘めてしまった数々の言葉。けれど、今はちゃんと思っていることを彼に言う様になった。言葉にしないことで、誤解を生んだりすれ違ってしまうことがあると気付いたから。 だけど、そう思っているけれど、本当の、視線のことは言えなかった。 「そっか、……じゃ、町中じゃなくて人があまりいない所だったら平気?」 それを聞いた涼君がホッとした表情をしたあと、少し思案してからそう切り出した。その問いに私が頷くと、 「実は、この前撮影で郊外にある森林自然公園にいったんだ。 そこ、ハイキングコースとかピクニックコースとか休憩所とか遊べる芝生広場とかあって、広いから人もいるけどそんなに気にならないから、そんなに遠くないし、たまにはそういう所でデートも新鮮でいいかも」 そう、彼がいい案だと破顔しながら提案をする。 郊外の自然森林公園 うん、いいかも 丁度、緑が綺麗な季節だし 「じゃ、私、お弁当作るね? 涼君の好きなものいっぱい」 ちょっと沈んでいた気持ちが、急上昇する。 『思考』から『至高』の時間に切り替わる。 「うん、楽しみにしてる」 そう言って涼君は、本当にうれしそうに満面の笑みを浮かべた。 久しぶりに次の涼君のオフの日が待ち遠しく思った。 そのあと二人で、待ち合わせ時間とか、当日に着て行く服装とか、そんな話題でとっても盛り上がった。 そんな他人とっては他愛もないことが私にとっての『至高』。 何ものにも代えららない幸せなひと時。 |
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