ある初夏の昼休み


「さおちゃん、良い場所見つけましたよ!」
 希有(きゆう)は、はしゃぎながら沙織(さおり)に向かってそう言った。
「良い場所?」
 沙織が、怪訝そうな顔でそう聞き返すと、
「快適にお昼ごはんを食べる場所ですわ」
 希有は目を輝かせてそう言うと、沙織の手を取り引っ張るように教室から2人して出て行った。

 やってきたのは生徒会長室前。
「えっと……、きゆちゃん? ここ?」
 沙織は、なんともいえない顔でそう希有に聞くと、
「そうです、さあ、はいりましょう!」
 ニコニコ顔で希有は沙織を促して、生徒会長室のドアをノックして中に入った。
 生徒会長室に入ると、中はエアコンがついているのか適度に涼しく快適だ。
 部屋の中は、一番奥の窓側に生徒会長用の机があり、その机の前に二人用のソファー対面に置かれた机つきの応接セットが置かれている。
 そのソファーに生徒会長の友永ともう一人の男子生徒が座り、各々の弁当を食べていた。
「あら? 先客がいらっしゃったのですか、雄輝(ゆうき)お兄様。 せっかく私のお友達を紹介しつつ、ここでお弁当とおもったのですが」
 希有は、友永にそう聞くと、
「いや、こいつは気にしないでいい。 俺の親友で、芸能科の科長の真宮涼雄(りょうゆう)だ」
 そう、希有の兄雄輝は妹である希有にそう答えた。
「はじめまして、真宮先輩。 私は、雄輝の妹で友永希有と申します」
 希有は、涼雄にむかってそう挨拶すると、彼は軽く会釈した。
「で、希有の友達は?」
 そう雄輝が聞くと、希有は沙織を紹介しようと横を向いたが、そこに沙織の姿はない。
 怪訝に思い、顔だけ後ろをむくと、沙織は顔を真っ赤にして希有の後ろに隠れるようにいた。
 沙織より20cmほど背の高い希有の後ろにいれば、背が低く小柄な沙織はなんなく隠れてしまう。
 その姿がとても可愛らしく映った希有は笑みを浮かべると、後ろにいる沙織を前に押し出しながら、
「お兄様、こちらが、私の友人の絹瀬沙織さんですわ」
 さらに満面の笑みを浮かべながら希有は、沙織を紹介する。
「沙織?」
 沙織の名を呼んだのは驚いた顔をした涼雄。
「涼くん、こんにちは」
 恥ずかしそうにでもとても嬉しそうに笑顔を浮かべて挨拶する沙織。
「あら? お2人ともお知りあいですか?」
 希有は、すこし驚いた顔でそう聞くと、
「俺の彼女」
 と、完結に涼雄がそうつぶやく。
「ええ?! マジ!」
 雄輝は、目を輝かせて涼雄と沙織を交互に見た。
 涼雄は、沙織を見て微笑んだ。
 沙織は、其れを見てさらに赤くなり笑みを深める。
 なんだか2人の世界に入りかけている。
 そんな中、取り残された兄と妹。
「お兄様、世間って案外せまいのですね」
「そうだな」 
 小声でささやきあう。

 その後、沙織は涼雄の隣に、希有は兄の雄輝の隣に座り、4人で和気藹々とお弁当を広げて昼休みを快適に過ごした。
 このメンバーでのささやかな昼休みの昼食会は、友永雄輝が生徒会長を引退するまでつづいたとか、いないとか。


2008/07/14 修正

おまけの 各々の心情(各場面の心の叫びのみ抜粋)

【沙織 編】

 えええ?! きゆちゃん、ここ生徒会長室だよ!? え? え? はいるの? ええええ?!

 ん? 生徒会長ってきゆちゃんのお兄さんだったんだ

 んん? え? え?! ええぇ?!! きゆちゃんのお兄さんの前に座ってるのって、りょ、涼くん?!

 え? え? なんで、涼くんが? あ、きゆうちゃんのお兄さんと親友なんだぁ、そっかぁ、そうなんだ

 あ、あ、なんか恥ずかしいようなうれしいような、照れちゃうよぉ〜 
 
 涼くんおいしそうに食べてくれてる、うれしいなぁ また、一緒にお昼したいなぁ


【涼雄 編】

 ん? 誰だろうこの子? え? ああ、雄輝の妹か へぇ、日本美人的な子だなぁ 雄輝とちょっと似てるかな?

 え? なんで、沙織がここに? ちょっと、嬉しいかも

 なに恥ずかしがってるんだか、まったくそういうところもめちゃくちゃ可愛いな

 沙織と一緒に弁当食うのもいいもんだなぁ また、一緒に昼飯食えないかな?



【希有 編】

 あら? お兄様が前々からおっしゃっていたお友達は、この方だったのですね

 まぁ、芸能科の科長さん、どおりで顔立ちがお綺麗で整っていらっしゃって、でも真面目そうなかたですわね

 あらあら、さおちゃんたら照れてるのかしら? 顔を真っ赤にして私の後ろに隠れてしまって、なんて可愛い方なのかしら

 まあぁ、この方さおちゃんの彼氏さんだったんですか? お目が高いですはよ、さおちゃんの良さをわかってらっしゃるようね

 はぁ、お2人の世界にお入りになりかけていましてよ? なんだかこちらまで赤面してしまいそうですわ


【雄輝 編】

 なんだ? 希有のやつ本当に来たぞ まぁ いっか 丁度いいから こいつのこと紹介しておくか

 へぇ、小さくて可愛い子だな? この子ばっちり希有の好みの子だ

 えええええ?! これが、あの涼雄の彼女?! うわ〜 そっか、コイツこうゆう子が好みなのか

 うは、おいおいおい、なんだかお二人さん2人の世界にはいってちゃったよ おお〜いもどってこ〜い



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