黒い竜は黒瞳を愛す | |
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02.初めて笑い合った日 | |
【彼女の視点】 それは、貴方があの花畑へ私を連れて行ってくれたときのこと。 いつもの無表情な顔で私の手をとり、連れて行ってくれた場所は彼の憩いの場。 色とりどりの花が一面に咲き誇り、花の香りが優しく香る。 私はうれしくて、目を輝かせながら花畑へ足を踏み入れる。 花の精が、私の回りを乱舞する。 うれしくて、うれしくて。 私は、彼の元へ戻って彼の手を引く。 彼は、私に手を引かれるまま一緒に歩き始める。 花畑の真ん中辺りに来ると私は彼に座るように手を引く。 彼が、座ると私も彼の前に座り花の精に断りを入れて花を摘み花の首飾りを編む。 ある程度の輪の大きさになると目の前の彼に掛けようと立ち上がり背を伸ばす。 彼との身長差はかなりのもの。 背を伸ばしても彼の首に花輪を掛けることもできない。 彼は、黙って頭を下げてくれた。 私は、彼の首に花輪を掛ける。 すると彼は、一輪の赤い小さな花を手折ると私の髪にそっと差し込んだ。 突然の行為にびっくりしたけれども、私はうれしくて満面の笑みを浮かべて彼にお礼を言う。 すると彼は、初めて私に微笑んでくれた。 初めて見た彼の微笑みは、とてもとても素敵で私の心臓はドキドキ。 うれしくて、ドキドキで、私は彼に抱きついた。 彼も、黙って抱きしめてくれる。 私を広い胸で受け止め、大きな手で背中を抱き閉めてくれる。 こんな、日々がいつまでも続けばいい。 ずっと、ずっと…… |
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【彼の視点】 気まぐれに、彼女を俺の気に入りの場所へ案内した日のこと。 無表情な自分をいつも慕ってくれている彼女に、なにかしたくてしたことだった。 元の姿である竜体にもどりひとっ飛びで険しい崖の上にある花畑へ彼女をつれてゆく。 目当ての場所に着くと、彼女を下ろし人体にもどる。 彼女は、目の前に広がる花畑をみて絶句する。 そのうち瞳を輝かせ目の前に広がる色とりどりの花々をみつめながら恐る恐る花畑に足を踏み入れる。 彼女の周りに無数の花の精が群がり歓迎するように乱舞している。 花の精と戯れているかとおもえば、いきなり俺の方に振り向き小走りに近づくと俺の手をそっととり手を引く。 俺は、手を引かれるまま一緒に歩き始める。 花畑の中央に来たとき座るようにと手を下に引かれ、俺はその場に座る。 彼女は、俺の前に座り花の精に許しを得て周りの花を手折りはじめ編み始める。 どうやら花輪を作っているようだ。 一生懸命な姿がほほえましくて俺は内心で微笑んだ。 やがて出来上がった花輪をもち立ち上がると背を伸ばして俺の首に掛けようと必死に手を伸ばしていた。 彼女との身長差はかなりのもので背伸びしてもどうしても俺の頭に花輪を掛けることができない。 俺は、彼女が掛けやすいように頭を下げた。 花のいい香りが掛けられた花輪から香る。 俺は、お礼の代わり近場にあった小さな赤い花をたおって彼女の髪にそっと挿して飾った。 すると、彼女は驚いた顔をした後満面の笑みを浮かべた。 その笑みが、とてもまぶしく愛しいかったため珍しく自分の表情が崩れた。 久しぶりに自分が微笑んだのがわかる。 その俺の顔を見た彼女は、さらに笑みを深くして俺に抱きついてきた。 花の匂いに混じって彼女自身の甘い香りが俺の鼻腔をくすぐる。 俺は、しっかり胸で抱きとめ彼女の背を両腕で抱きしめる。 たまらなく愛しい彼女。 今、この瞬間が永遠に続くことを願わずにはいられない…… |
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