黒い竜は黒瞳を愛す

03. 二人なら、きっと



 その時は何の疑問も抱かず、ただ幸せの日々に浸っていた。

 彼と種を超えて結びついていると信じていたから。

 他のたとえは知らない。

 けれど、私と彼、二人なら、きっと乗り越えていけると思った。

 疑いもせずそう思っていた。

 幼く愚かな私。

 彼は、私のことをどう想っている?

 愚かで哀れな私を同情の想いで受け止めてくれているのだろうか?

 彼から一度として言葉を返してもらったことがない。

 たとえ、褥の中でも … …

 いつも一方通行の会話。

 彼の断片的な意思が直接心に響くのみ。

 私の言葉は、彼には解らない。

 彼の言葉は、私には解らない。

 もし、言葉が通じるとしても怖くて聞けない問い。

 幼く愚かだから、気づかないふりをする。

 しかし、心の奥底では、彼の本心を欲している。

 答えを知りたくても、臆病な私はその思いを無意識に封印する。

 ただ、今は彼と一緒にいられる限られた時間を大切にしたい。

 愚かな願いの為に私は、彼を独占する。

 今、彼の瞳に写るのは私だけ … …




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