黒い竜は黒瞳を愛す

04. 今だけは、二人で



 私と彼は根本的に種が違う。

 それは、分かりきっていたこと。

 けれどずっと考えないようにしていた。

 しかし、現実は残酷だ。

 彼は、繁殖期にはいり彼の血を残すために神界にある竜神の谷へ一時帰還する。

 それは、覆せない絶対の摂理。

 たとえ、私が泣いて縋っても彼は私の心など理解できない。

 彼は知らない、ここと神界では時の流れが違うということを … …

 思い知らされる、彼と私の違い。

 種と生きる時の流れ。

 すでに、巫女としての度を越えてしまった私。

 その報いを受けるときが刻一刻と近づいてきている。

 ならば、彼が神界へ、谷に帰るその時まで。

 今、この瞬間。

 彼と過ごすこの一瞬も無駄にしたくない。

 私は、彼を愛している。

 だから、今だけは、今だけは二人でこの時を過ごさせてください。

 彼が、ここを去ったとき私はその罪の償いを受けるでしょう。

 だから、今だけは、彼を愛させてください。

 彼の側にいさせて… …




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